(1) 経緯
中規模以上のマンションでは億円単位の管理・運営資金を保有するなど中小企業並みの経営組織体であるが、これまでその運営主体は管理組合であった。しかし築40年以上のマンションが全国で2割(約81万戸:(2022年末時点)になり、今後10年で約2倍、20年後には約3.7倍に増加が予想されている。
老朽化による設備の劣化や不具合、耐震性の低下、空室率の増加、資産価値の低下など、様々な問題があり、修繕費用が高額になったり、安全性の低下等、住民代表だけの管理組合では対応困難な深刻な問題を抱えているマンションが多い。
またマンション住民の高齢化も進み、2022年では約4割が65歳以上となっており今後さらに高齢化が進む。管理組合の運営が困難になるとともに建物の維持管理や修繕への適切な管理・運営が困難になっている。
こうした状況を懸念した国交省は、マンション管理に管理組合でなく専門的な能力を持つ第三者(個人・法人)の導入を強化し始めているが、管理組合を廃止し、管理会社自身が外部委託先と住民代表組織の両方の立場も兼ねる等、利益相反行為が懸念されるケースも増えている。
(2)研究会の趣旨・目的
このような状況下で、「監査」については従来の延長線上である「監事」を住民から選ぶ仕組みが継続されていて、多くの場合、専門的な監査能力・知識を持たない一般住民が1年ごとの交代制で監査を実施しており、形骸化が懸念されている。
もともとマンション管理の「監事」は会社法上の「監査役」をモデルとした形態であるが、管理組合の理事も兼任可能で、独立性・中立性が十分に担保されていない。またいわゆる三様監査(内部監査、監査役監査、外部監査)等の体制はなく、監査実態は昔の企業の検査部の事務的な点検・検査にとどまり、リスクベース監査や経営監査などの概念はまだ導入されていない。こうした課題に対して内部監査人(CIA)の立場と経験から(営利企業ではないものの)大口の資金を運用するマンション管理の健全性維持に資する先進的な「内部監査」手法を研究し、国家的な重要課題になりつつある「マンション管理」問題へ提言したい。
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